平成18年8月19日(土)
コース:猿倉ー白馬岳ー雪倉岳ー朝日岳ー犬ヶ岳ー白鳥山ー親不知
メンバー:単独
<ルート>
<コースタイム>
場所 |
時刻 |
ランタイム |
コースタイム |
ランタイム÷
コースタイム |
猿倉 |
5:00 |
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|
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白馬岳 |
7:15 |
2:15 |
6:05 |
0.37 |
雪倉岳 |
8:15 |
1:00 |
2:50 |
0.35 |
朝日岳 |
9:55 |
1:40 |
3:30 |
0.48 |
黒岩山 |
11:30 |
1:35 |
3:40 |
0.43 |
犬ヶ岳 |
12:55 |
1:25 |
3:00 |
0.47 |
白鳥山 |
15:20 |
2:25 |
3:30 |
0.70 |
親不知 |
18:05 |
2:45 |
3:50 |
0.72 |
合計 |
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13:05 |
26:25 |
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夏の間にハセツネの練習として長い山岳ランを計画していた。最初は大胆にも7月の3連休に立山〜上高地を考えていたが、天候が悪く、断念した。それで、もう一度と考えてはいたが、立山黒部アルペンルートに夜間、あるいは日の昇らないうちに入ることができないことと、お金もかかるので、代替ルートを考えた。お盆は実家に帰ったので、ビールを飲みながら地図をずっと眺めていた。
私は爺ヶ岳、五竜、唐松、不帰に行ったことがない。なのでこれらをつないで白馬に抜けるルートを当初考えてみた。行ったことのないところばかりなのでワクワクしたが、どうも、岩稜帯が多くて、走る要素が少ない気がしたし、渋滞も心配なので、気が乗らなかった。そうして視線を北にずらしていけば、これまた行ったことのない白馬から北の山並みが見えてきた。ノートにいくつものルートのコースタイムとランタイムを書き連ね、現実的な行動時間を考えながら地図を眺めていると、栂海新道に行きたくなってきた。決め手は何と行っても、行ったことがないということ。オンサイト!それから人が少なそうであること、全体的に下っていくこと。これで決まりになったのだが、その距離が50km近いと考えられることと、水場が?であること、食料等の供給源である営業小屋がないことが不安要素だった。
また、コースタイムが26時間くらいあるので、その5割で進んだとしても(経験上がんばれば4-5割)、13時間かかる。5時に出発しても18時になるので、明るい時間帯をフルに使うことになる。時間的余裕はない。
<レポート>
朝、3:30に起きてヲカダに猿倉まで送ってもらう。駐車場はそこそこの混み具合。まだ少し薄暗い中、出発する。林道を進み、一人オジサンを抜かした後、稜線まで誰も先行者はいなかった。白馬尻小屋にはテント泊の登山者が出発の準備をしていた。軽装について何か言われるとヤなので足早に通過。すぐに大雪渓に。スプーンカットなので、氷状になっているところだけ注意すれば特に問題なかった。冬山のようにつぼ足のあとでもあるのかと思っていたが、そういうものはなく、ただうっすらと茶色く汚れた筋が延びているだけだった。今年の7月にあった崩壊によって、一部登山道が付け換わっていた。
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さて出発。まだ薄暗い。 |
ようやく、稜線が近づいてくると、下山者とすれ違い始めた。大雪渓では、登りの登山者に一人も会わなかったが。白馬岳山頂は小屋どまりの人々が多くいて、写真をとりまくっていた。予定より1時間ぐらい早く到着。ちょっと気張りすぎたかもしれない。でも余裕がないので足早に通過。
ここからは急激な登りはないので順調に走る。三国境も走って通過したのかあまり記憶なし。鉢ヶ岳が見えてくると、越すのが恐ろしく感じたが、登山道は山の麓を通っておりホッとする。途中、小さな雪渓があったが問題なし。やがて雪倉非難小屋をすぎてから急登を経て雪倉岳へ。いつか雪倉から蓮華方面にでもスキーに来たいな〜と思いながら、さっさと通過。
ここからはしばらく進むと急な下りがある。そこに小川のような水場が会ったので、文字通り水浴びする。すずめのように。赤男山は左側を通過する。ここの2箇所の水場は通過。木道があったり湿地があったりで景色もよく、大体走ることができた。
ようやく朝日岳への分岐に着く。皆、朝日小屋に向かうからか、ここから山頂まではあまり人に会わなかった。山頂までの急登にあえぎながら登る。なんども、着いた?!と思いながら、本当の山頂へ。疲れた。疲れたが、まだ、余裕あり。距離的には全行程の半分弱くらいだ。
朝日岳からはこれから進む栂海新道が良く見えた。日本海も見えた気がしたが、まだまだ果てしなく続く気がする。当初はここで疲れていたり、自信がなければ、五輪尾根から蓮華温泉にエスケープすることも考えていたが、そんなことを思い出すこともなく、長栂山方面に吸い込まれるように進んだ。吹き上げのコルでは石に赤い字で「日本海→」と書いてあり、それだけでこれからの道程にワクワクした。この辺から照葉ノ池、アヤメ平周辺、黒岩平までは、湿地帯で残雪もあり、また花もいろいろ咲いていて(眺める余裕はなかったけど・・・)、とてもきれいだった。黒岩平は小屋跡のような場所があり、豊富な水場もあるのでテントサイトに最適だろう。
順調に走って、黒岩山につくと、たくさんの人がいた。皆、小屋どまりなのだが、60L以上の荷物を持っている。自分は多分6分の1くらいかな・・・前日は皆朝日小屋で泊まったようだ。軽装についてなにかいいたそうな光線を出している人がたくさんいたので、さっさと走り去った。
さて、このころからだんだんシャリバテ気味になってきた。もちろん、パワーバー、アミノ酸を注入するが、暑さのためかふらついてくる。それでもサワガニ山を越え、北俣ノ水場まで来た。尾根から沢筋を少し降り、ちょろちょろの水場で水を汲みながら、パワーバーを食べようとするが、吐き気がしてくる。いままでどんなに疲れていてもこんな経験はなかったので、ちょっと自分の体の変化にビビル。これは何だろう。ちょっと冷静にと思い、頭を冷やして水を飲むと、少し持ち直した。多分、熱中症になりかけていたのかもしれない。
水場から尾根筋に戻って急坂を少し登ると、犬ヶ岳に着いた。ここに到着する予定時間は15時だったのだが、2時間近く早くつくことができた。しかし、もうフラフラだ。ちょっと暑すぎるノダ。。。山頂は暑すぎるのですぐそばにある栂海山荘に行く。先行者が2名。昼ごはんだった。暑いですね〜という挨拶でいろいろ話をする。僕もここで大休止することにする。いままでほとんど休んでないし、荷物を降ろしてゆっくり座るのはここが初めてだった。
先行者はご夫婦でなんと盆前に上高地から入山し、日本海へ抜ける縦走中らしい。16日目だという。いろんな人がいますね〜と互いの山行のスタイルの違いに対して驚く。このご夫婦からブドウ糖をもらう。小屋の中を観察し、ノートにサワガニ山岳会さんへの感謝のメモを残して再び進むことにする。
もう筋肉中のグリコーゲンは消費しつくされ、バー以外の炭水化物の注入もしていないので、もらったブドウ糖をなめると、火の中にガソリンを突っ込んだように、ボウッとパワーが出るような感覚がする。しかし、すぐに燃え尽き、再び弱くなる。パワージェルを注入するともうちょっと長持ちする気がするが、ローグリセミックな炭水化物などと比べるとこれも短命である。よく燃える乾燥した細い木を火にくべるようなイメージ。炭水化物系のものを持って来るべきだったのか。このへんの食い物に関するタクティクスは非常に重要だ。特に30km以上のランにおいては。
下りの途中にあった黄蓮ノ水場で涼みながら、残りの食料を食べる。蚊に刺され、汗だくで不快指数が振り切れる。なんでこんなことしてんだろうとまたもや思いつつ、完全に電池切れの体を動かすにはとにかく食べるしかない・・・
ヘロヘロになりながら白鳥山を目指す。長野に引っ越してきて最初の冬にR&Bの人々とボードで行った。あの懐かしい小屋に早く着きたいと思いながら。
犬ヶ岳から標高を落として樹林帯の中を行くと、体から大量に放出される汗とともに発せられる二酸化炭素にアブや蚊が寄ってくるようになる。もはやヘロっている自分はこれらを置いていけるほどのスピードで走れるはずもなく、登りでは面白いように蚊に刺される。アブには刺されなかったが、周りをブンブン飛び回って閉口した。
それでも森の中を眺めれば、ブナが見え始め、少し癒される。ブナって不思議な木だ。
白鳥山に着くまでにニセピークに何度か騙され、泣きが入る。ようやくたどりついた小屋に転がり込むと、誰もおらず、中は蒸し暑く、ゆっくり休む気になれない。外で横になるととアブにやられそうでヤダ。結局、汗だくになりながら小屋の中で横になる。立ち上がると自分の体の形に床が濡れていた。
白鳥小屋から輝く日本海を見る。ゴールはすぐそこだ。予定ではここへの到着時間は17時だったが、到着は15:20。時間的には余裕ができた。ここから親不知までのコースタイムは4時間だからゆっくりいっても19時までには親不知につけるだろう。
白鳥山を去り、下り始める。これからはほとんど下りだが、急なのでぶっ飛ばせない。特に坂田峠手前の下りは急すぎて、腿も痛くて横歩きするときもあった。情けない。。。
坂田峠に着くと、ここからタクシーに乗ろうと準備しているパーティーがいた。携帯がつながらないらしいが、誰かが代表で呼びに走っているのだろうか?しかし、栂海新道に来て親不知まで歩かないのはもったいないと思いながら、尻高山への登山道に入る。このころからだんだん薄暗くなってくるが、最後の力が出始め、走れるようになってきた。最後のピーク、入道山を越え、下り始める。ここでひっくり返ったら、日本海まで転がっていきそうな斜面。ちょっと大げさだな。木々の隙間から日本海の水面がキラキラ見える。やがて、車の騒音が大きくなり、ゲートを越えて国道8号線に出た。ついにゴール。体は北丹沢レースの方が辛かったけど、今回は暑さが辛かった・・・何はともあれ、目標達成!完走!
今から思えば、国道から海に降りて日本海に足をつけてみるべきだったと思う。しかし、僕は目先の牛丼に走ってしまった。まあ、また行けばいいか。
<さいごに>
山岳ランは、数奇なジャンルなのだろうか? 僕にとっては山スキーヤーから見るワカンの登山者と同じ感覚だ。スキーを履けば、もっと世界が広がるのに・・・と思うのはおせっかいだろうか。
などと思いつつ、縦走路で会った重荷にあえぐ人々を抜き去るたびに、僕はこんなにも自由ですよ、皆さんもどうですか?などと声をかけたくなったものだ。山道を飛んではねて、追い越しざまに後ろを振り返ったら、あきれたように笑う人々の笑顔ばかりが僕の印象に残った山行だった。
<装備>
ザック:リアクター10L、 シューズ:バスクライトスピード
トップス:ユニクロのジッパー付Tシャツ
ボトムス:CWX(エキスパートセミロング)&ユニクロセミロングパンツの重ね着
ツェルト(モンベルU.L.) 、カッパ(モンベルU.L.上のみ)、ヘッドランプ、手持ちライト
ピンチパック、ロングT、携帯電話、ナイフ&笛
食料等:ハイドレーション2L(アミノバリュー3袋)、ゼリー2つ、パワーバー1本、パワージェル2本、カロリーメイト1箱、森永?のバー(4本)、おにぎり2つ、飴5つ、栂海山荘でもらったブドウ糖
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